映画「もののけ姫」について

映画「もののけ姫」について

もののけ姫を知らない日本人なんているんでしょうか。日本を代表するクリエイター宮崎駿が生み出した傑作「もののけ姫」。海外でも高く評価されており、根強い人気を誇っているこの作品は、当時の日本映画の歴代興行収入第1位を記録しました。それぐらい国民的なアニメ映画「もののけ姫」が、イギリスの若手劇団「Whole Hog Theatre」の手によって舞台化されました。宮崎駿作品が舞台化されたのはこれが初めてのことでした。日本の映画が、公開から16年の月日を経て、遠く離れたイギリスの地で舞台化されるなんてすごいことだと思いませんか?この舞台版「もののけ姫」は、2013年に日本でも上演され、好評を博しました。今回はこの舞台化を記念して、「もののけ姫」の魅力をおさらいしたいと思います。

映画「もののけ姫」

「もののけ姫」は、1997年に公開された宮崎駿によるスタジオジブリの長編アニメーション映画作品です。森を侵す人間たちとあらぶる神々との対立を背景に、狼に育てられた「もののけ姫」と呼ばれる少女サンとアシタカとの出会いを描いています。宮崎が構想に16年、制作に3年を掛けた大作であり、興行収入は193億円を記録しました。これは当時の日本映画の興行記録を塗り替える快挙でした。映画のキャッチコピーは「生きろ。」です。主題歌の「もののけ姫」を歌う米良美一は、女性のようなハイトーンボイスで歌うカウンターテナーであり、この作品がきっかけで広く知られるようになりました。声優には「平成狸合戦ぽんぽこ」でおキヨを演じた石田ゆり子、「紅の豚」でマンマユート団のボスを演じた上條恒彦、「風の谷のナウシカ」でナウシカを演じた島本須美、アスベルを演じた松田洋治というように、過去にジブリ作品に出演していた人物が多く起用されています。

あらすじ

エミシの隠れ里に住む青年アシタカは、村を襲った「タタリ神」に止めの矢を放ったことで死の呪いをかけられてしまいます。そのタタリ神の中から出てきたものは、鉛の塊でした。肉を切り裂き、酷い痛みと苦しみを与えたその鉛は明らかに人間が作ったものでした。アシタカは、己の運命を見定めるため、はるか西方の地を目指してひとり旅立ちます。森を抜けると、一つの村が現れます。しかしそこでは大勢の武士が無抵抗の農民に襲い掛かっていました。農民を救おうと弓をつがえたアシタカの腕は、突然ブヨブヨと不気味に蠢き出します。その腕で放った矢は、武士の腕と首をもぎ取りました。日に日に呪いのアザが濃くなっていく事に気付いたアシタカ。西へ西へと歩みを進めます。ある村でアシタカはジコ坊という僧侶に出会います。ジコ坊から西の土地の話を聞いたアシタカは「シシ神の森」を目指して旅立ちます。その途中、アシタカは大きな山犬と少女に出会います。少女は傷ついた山犬に駆けより、その傷口から血を吸いだしていました。山犬の血にまみれた彼女・サンは美しく、アシタカは名乗りをあげますが、サンは「去れ」と言い残して、山犬と共に何処かへ消えてしまいます。そんなおり、犬神の子に襲われて谷に転落した男たちが川を流れてきます。アシタカは何とか生き延びていた牛飼いの甲六らを助け、彼らを送り届けるためにタタラ場へと向かうことに。「シシ神の森」を抜けることを異常に怖がる甲六を宥め、タタラ場へとやって来たアシタカが見たものは、山林を開拓して鉄を作るタタラの民とその長・エボシ御前でした。エボシはアシタカを歓迎してタタラ場へと迎え入れますが、彼女たちが鉄を作るためにシシ神の森を切り開き、それが原因でナゴの守という猪神をアシタカの村を襲ったタタリ神に変えてしまったことを知ります。そのことで山犬一族はエボシを憎んでいたのでした。その晩、エボシの命を奪う為、サンがタタラ場を襲撃します。サンは犬神モロの手によって山犬として育てられた少女でした。エボシとサンの戦いを止めようと間に入ったアシタカは、深手を負いながらもサンを救い、彼女と共にタタラ場から脱出します。そんなアシタカをサンは一度殺そうとしますが、彼が他の人間とは違うのではないかと感じ、その命の行方をシシ神へと託すことに決めます。そしてアシタカの前に、人の顔と獣の身体、樹木の角を持ったシシ神が現れます。シシ神はアシタカが負った傷を癒し、彼に生きる道を与えますが、死の呪いまでは解いてはくれませんでした。サンはシシ神が生かすと決めたアシタカを懸命に看病します。そんな中、齢500歳の老猪・鎮西の乙事主が、ナゴの守の敵を討ち、森を荒らす人間との戦いに決着を付けようと、猪神を引き連れてシシ神の森へとやって来ます。一方、ジコ坊は唐傘連とジバシリを引き連れ、不老不死の力があるというシシ神の首を奪いにやってきました。「森と人、双方生きられる道はないのか」。アシタカは人間と森との戦いを止めようと奔走しますが、戦いはもはやだれにも止められないところまで動き出していました。サンと山犬たちは乙事主に加勢してエボシを狙います。しかしエボシはジコ坊と結託してシシ神を狙い、その首をもぎ取ってしまいました。首を無くしたシシ神は触れるもの全ての命を奪いとるデイダラボッチへと姿を変え、森の命も人間の命も奪い取っていきます。死の呪いが体中に広がる中、アシタカとサンは何とかその首をシシ神に変えそうと奮闘しますが…。

キャスト

スタッフ

原作・脚本・監督…
宮崎駿
作画監督…
安藤雅司、高坂希太郎、近藤喜文
原画…
大塚伸治、篠原征子、森友典子、賀川愛、小西賢一、遠藤正明、清水洋、栗田務、三原三千雄、大谷敦子、稲村武志、芳尾英明、二木真希子、山田憲一、笹木信作、山森英司、吉田健一、松瀬勝、桑名郁朗、松尾真理子、河口俊夫、野田武広、杉野佐秩子、近藤勝也、金田伊功、テレコム・アニメーションフィルム
動画チェック…
舘野仁美、中村勝利、斎藤昌哉、中込利恵、小野田和由
動画…
手島晶子、大村まゆみ、北島由美子、真野鈴子、坂野方子、柴田和子、倉田美鈴、沢九里、鈴木麻紀子、鈴木まり子、菊地華、鶴岡耕次郎、田村篤、野口美律、藤井香織、米林宏昌、矢地久子、山田珠美、川田学、佐光幸恵、アレキサンドラ・ワエラウフ、ダビット・エンシスナ、東誠子、山浦由加里、西戸スミエ、横田喜代子、富沢恵子、コマサ、土岐弥生、柴田絵理子、長嶋陽子、椎名律子、岩柳恵美子、藤森まや、近藤梨恵、常木志伸、西河広美、渡辺恵子、谷平久美子、矢野守彦、古谷浩美、安達昌彦、山本まゆみ、中山大介、田辺正恵、新留理恵、松下敦子、太田久美子、清水理枝、林良恵、小林幸子、手塚寛子、原口ちはる、テレコム・アニメーションフィルム
作画協力…
アニメトロトロ、OH!プロダクション、スタジオコクピット、スタジオたくらんけ、グループどんぐり
美術…
山本二三、田中直哉、武重洋二、黒田聡、男鹿和雄
背景…
吉田昇、春日井直美、長縄恭子、斉藤久恵、伊奈淳子、平原さやか、荒井貞幸、太田清美、谷口淳一、長田晶子、佐々木洋明、田村盛揮
特殊美術…
福留嘉一
特殊効果…
谷藤薫児、橋爪朋二、村上正博、榊原豊彦、谷口久美子
CG…
菅野嘉則、百瀬義行、片塰満則、井上雅史
色彩設計…
保田道世
色指定…
井関真代、森奈緒美、守屋加奈子
仕上げ…
小野暁子、熱田尚美、鍋田富美子、野村雪絵、山田和子、鈴木栄一、片山由里子、スタジオキリー、IMスタジオ、トレーススタジオM、東映動画、テレコム・アニメーションフィルム、スタジオOM青森ワークス、アニメハウス、はだしぷろ、ピーコック、ムッシュオニオン、スタジオOZ、スタジオアド
デジタルペイント…
石井裕章、佐藤麻希子、杉野亮、服部圭一郎、高橋プロダクション/T2Studio、DR MOVIE、T&V
録音演出…
若林和弘
録音演出助手…
真山恵衣
整音…
井上秀司
編集…
瀬山武司
編集助手…
水田経子、内田恵、田村眞子
撮影監督…
奥井敦
撮影…
藪田順二、高橋わたる、古城環
音楽・ピアノ…
久石譲
指揮…
熊谷弘
演奏…
東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
音楽制作…
ワンダーシティ、スタジオジブリ
録音…
東京テレビセンター
音響制作…
オムニバスプロモーション
録音スタジオ(音楽)…
ワンダーステーション、アバコクリエイティブスタジオ
録音スタジオ(台詞)…
MITスタジオ、アバコクリエイティブスタジオ
音響効果…
伊藤道廣
効果助手…
石野貴久
効果協力…
VOX 猪飼和彦、渡辺基、時田滋
効果制作…
サウンドリング
監督助手…
伊藤裕之
演出助手…
有冨興二、石曽良正徳
制作担当…
川端俊之
制作進行…
大塚浩二、居村健治、鈴木健一郎
制作デスク…
田中千義、西炯共昭
プロデューサー…
鈴木敏夫
制作…
スタジオジブリ
英語版演出…
ジャック・フレッチャー
配給…
東宝

感想

いまさら私が感想なんて書かなくても、ご存知の方が多いと思いますが、念のため書いておこうと思います。私がこの映画を観たのは、小学校高学年の頃でした。劇場で見たときにはタタリ神のあまりの迫力に怖気づき、その後、なぜタタリ神になったのかを知り、乙事主様の末路を見て、人間とはなんて愚かで酷い生き物なのだろうと憤慨した覚えがあります。山の間伐をする業者さんに対して敵対心を抱いたり、ゴミを分別しない家族に対して本気で怒ったりしていました。ですが、何度も何度も繰り返し見ていくうちに、この物語は「人間=悪」だというのがテーマではないことに気が付きました。それはアシタカのセリフからも分かります。「森と人が争わずにすむ道はないのか」「サンは森で、私はタタラ場で、共に生きよう」と、何度もアシタカは「共に」生きる道を模索しています。「もののけ姫」を見ると、人間なんて生まれてこなければよかったのにと思ってしまいますが、もう生まれてしまったものは仕方がないですから、どうにかしてお互いを尊重しながら生きていこうよとアシタカは言っているのだと思います。アシタカが呪いを掛けられたときのタタリ神のセリフが印象的です。「汚らわしい人間どもめ。我が苦しみと憎しみを知るがいい」。人間は森や動物にとっては本当に「汚らわしい」ものだと思います。生きているだけで環境を破壊するし、ゴミは出すし、資源はどんどん使うし。それを自覚して生きていこうとこの映画は言っているのではないかなと、私なりに考えました。この映画のキャッチコピーは「生きろ。」です。森も人間も争わずに共に生きろと言われているような気がしました。

舞台「Princess MONONOKE~もののけ姫~」

イギリスの若手劇団「Whole Hog Theatre」によって舞台化されました。劇団が宮崎監督の友人で、「ウォレスとグルミット」などで知られるイギリスのアニメーター、ニック・パークを通してオファーしたところ、劇団が作成したテスト映像を見た宮崎監督がGOサインを出したのだそうです。宮崎監督が自身の作品の舞台化を許諾するのはこれが初めてのことでした。本国イギリスではロンドンにあるニュージオラマシアターにて上演されました。2013年4月2日~6日のチケットは発売から72時間で、6月18日~29日の再演はわずか4時間半で売り切れたそうです。日本では2013年4月29日~5月6日に、渋谷アイアシアタートーキョーにて上演されました。キャストの中には、唯一の日本人で、ニューヨークを拠点に活動中の女優・三宅由利子が含まれています。作中のテーマソング「もののけ姫」も彼女が歌っています。人間以外のキャラクターは古着やビニール、ペットボトルなどの廃材を使用して作られたパペットで表現していました。

舞台の感想

「もののけ姫」が舞台化と聞いて、最初は「え~絶対失敗するよ…」と思っていました。あの大自然と太古のまま生きる動物たちや神々は小さな舞台では到底表現しきれないのではないかと思っていたからです。しかし、予想は大きく外れました。結論から言いますと、舞台「Princess MONONOKE~もののけ姫~」は素晴らしかったです。森の鬱蒼とした雰囲気やタタリ神のおどろおどろしさを見事に舞台で表現していました。舞台が始まって3分と経たないうちに鳥肌が立ってしまいました。大好きな「もののけ姫」がそのまま目の前で、生で演じられているということに感動してしまいました。動物たちは廃材を利用した手作りのパペットで表現されていて、ミュージカルの「ライオンキング」に近い表現方法となっています。やはり大きさは迫力に掛けますが、演者の演技力のお蔭で違和感なく見ることができました。矢や石火矢が飛んでくる場面では照明を上手く使ってその様子を表現しており、これも凄いアイデアだと思いました。一番よかったのはシシ神がデイダラボッチになる場面です。シシ神の首がぐーっと伸びて、背景にデイダラボッチが現れるという演出がすごくかっこよかったです。セリフも原作に忠実に作ってあり、全編英語ですが、舞台のサイドに字幕がでるので全く問題ありませんでした。残念な点を挙げるとすれば、サン役の方があまり可愛くなかったことですね…。日本人キャストにこだわったのかもしれませんが、「そなたは美しい」のセリフに「う~ん」となってしまいました。ですが、実際に山犬に育てられた少女がいたらああいう感じかもしれないなと妙に納得させられる説得力はありました。それから、最後のシーンのサンのセリフ「アシタカは好きだ。でも人間を許すことはできない」という場面が、英語だと「I like you」になっていて、ちょっと違和感がありました。私の解釈としては、そこは「love」じゃないのかなーと思っていたので。しかし、「love」では強すぎる感じもするので、やはり「Like」でいいのかもしれません。日本語って難しいですね。そういう微妙なニュアンスを込められる言語って他にはあまりない気がします。全く期待せずにみた舞台でしたが、大変楽しめました。再演したらまた観に行きたいと思います。